お気に入りの偏愛アイテムを語るこのシリーズ。
第21回目は「オールドケメックス CM-2」について。
CHEMEX(ケメックス)といえば、アメリカが産んだコーヒードリッパーの名作。
現在も生産されていて人気のあるアイテムなんですが、今回紹介するのは現行品ではありません。
1960~1970年代に生産された、オールドケメックスと呼ばれるヴィンテージ品です。
オールドケメックスという選択肢
CHEMEX(ケメックス)にはざっくり2つの種類があって、機械によって大量生産されたマシンメイドシリーズと、手作業で作られたハンドブロウシリーズに大別されます。
ケメックスを買おうとすると、だいたいはこの2択で迷うと思うのですが、実はマニア向けの第3の選択肢があります。
それが今回取り上げるオールドケメックス。
オールドケメックスというのは、1941年~80年代初期あたりに製造されたヴィンテージ品の総称であります。
実は、オールドケメックスには現行品とは異なるモデルが多数存在しております。
ケメックスは結構仕様変更を繰り返していまして、
- パイレックスに製造を依頼していたモデル
- ドイツのガラスメーカーに製造を依頼していたモデル
- 注ぎ口の溝が無く枠のパーツも異なるモデル
など、色々なモデルがあるんですよね。
オールドケメックスのほとんどは手作業で作られたハンドブロウ製品なんですが、中にはマシンメイドもあります。
モデルによって生産数は異なり、ものによっては入手困難なレアアイテムだったりするんですよ。
ちなみにケメックスと言えば、その機能美からニューヨーク現代美術館(MoMA)、スミソニアン博物館、フィラデルフィア博物館に展示されているというエピソードが有名ですが。
試しにMoMAのサイトで紹介されているケメックスの写真を見てみましょう。
これは普通のケメックスではなく、オールドケメックスです。
口の上の部分にエンボス刻印がうっすら見えるかと思いますが、これはオールドケメックスの中でも初期に製造された希少モデルで、なかなかお目にかかれないレアものであります。
希少なモデル「CM-2」
僕が手に入れたのは、1960~1970年代に製造された、CM-2(2-6cup用)というモデルです。
このサイズは当時のアメリカでは製造数が少なかったらしく、レアアイテムの部類に入ります。
アメリカではもっとデカいサイズの方が好まれてたんですかね。
これより小さいCM-1(1-3cup用)もかなりのレアアイテムと言われていますが、僕が探した感じではCM-2の方が探すのが難しかったです。
僕のは初期モデルではないので、MoMAの写真にあったようなエンボス刻印はありません。
代わりに底面に緑字の刻印があり、パイレックスが製造したモデルであることがわかります。
ヴィンテージ品だとこの緑の文字がほとんど消えかかっているものも多いんですが、これはくっきりと綺麗に残っています。
目立った傷や汚れも無く、状態としては超美品。
CM-2でここまで綺麗なものは、探してもなかなか見つかりません。
オールドケメックスは、製造上わずかな気泡や部分的な歪みがあるのも特徴です。
僕のオールドケメックスも、よく観察すると縁がわずかに歪んでいて、2箇所ほど気泡が確認できます。
現代の品質基準で言えばB品に該当するのかもしれませんが、当時はこれがデフォルト仕様でした。
技術的な問題ですかね。
まぁ、これがヴィンテージの味というものですし、この気泡に当時のアメリカの空気が閉じ込められていると思えば、逆に最高の興奮ポイントなんじゃないでしょうか(笑)
“超”偏愛ドリッパーたる所以
僕は元々ケメックスの3カップ用サイズ(ハンドブロウ)を持っていました。
しかし「もう少しコーヒーの摂取量を増やそうかな」と思い立ちまして、これよりワンサイズ大きいケメックスを買おうと思った次第です。
というのも、いつも250ml(1.5杯分くらい?)程度のコーヒーを淹れて飲んでいたのですが、以下の記事を読んで、もう少し増やして2~3杯分くらい飲んだ方がより健康効果を享受できそうだなと思ったんですよね。
300~450mlくらい抽出するのであれば、もうワンサイズ大きいケメックスでも良さげだと感じたんで、サイズアップさせることにしました。
現行のハンドブロウ製品を買っても良かったんですが、もっとこだわっても良いだろうってことでオールドケメックスをチョイスすることに。
なぜここまでケメックスにこだわるのかというと、この見た目の美しさもさることながら、「ケメックスで淹れるコーヒーは健康面でも最強なんじゃないか」と思っているからです。
これはなぜかあまり語られていない観点ですが、実は「コーヒーの健康効果を高めるにはフィルターで入れるのがベスト」という研究があるんですよね。
コーヒーにはカーウェオールとカフェストール(総コレステロールとLDLコレステロールを増やしてしまう成分)が入っているんだけど、フィルターを使うことによってこれらをかなりのレベルで取り除けると。
今手元に無いんですが、確かこちらの書籍でも同じことが書かれていたはず。
「フィルターで淹れるとスッキリとクリアな味わいになる」みたいなことは良く言われることですが、フィルターは味だけじゃなく健康観点でも重要な役割を果たしているというわけなんですよ。
ケメックスの専用フィルターは他のメーカーよりも分厚い紙で作られているんで、余計な成分のフィルタリング性能もかなり高いんじゃないかと思われます。
美しくて、機能的で、使いやすくて、健康にも良い。
ここまで完璧だと、逆に投資しない理由が無い。
非の打ち所がない超偏愛コーヒードリッパー、それがこのケメックスなのであります。
カラーウッドネック革命
このケメックス、本体はヴィンテージですが、実はウッドネック(木枠)部分は新しいものに交換しております。
僕が購入したのはこちら。
これまでウッドネックにこんなカラーバリエーションは(少なくとも日本には)存在しなかったんですが、ケメックスの日本総代理店であるOBTさんが2021年から取り扱いを始めたみたいです。
これ、ケメックス愛好家からするとめちゃくちゃ待ち望んだアイテムではないでしょうか(笑)
今までウッドネックに選択肢なんて無かったですからねぇ。
黒も良さげですが、ヴィンテージに合わせるならダークブラウンかなということで、僕はダークブラウンをチョイスしました。
個人的にはずっと探し求めていたアイテムなんで、こんなマニアックなアイテムを作ってくれたOBTさんにはめちゃくちゃ感謝しております(笑)
偏愛のリテラシー
最後に、ケメックスと直接的には関係ない話になりますが、最近読んで個人的にグッときた文章を紹介します。
昨今、モノを持たないことが良しとされる風潮があるように思う。ミニマリストや断捨離、フランス人は服を10着しか持たない、等々。
引用元:モノとの関係 Yuta Watanabe https://note.com/yuta_watanabe/n/n01583ef0471b
少ないモノで生活すること自体は良いことなのだと思うが、このトレンドの根本には、「モノと上手く関係を築けていない」ということがあるのではないか、と私は考えている。
グラインダーやドリッパーの使い方を覚え、より美味しいコーヒーを淹れるために勉強や試行錯誤しない限りにおいては、購入したコーヒー器具は「宝の持ち腐れ」となってしまう。カメラはある程度のテクニックを要するし、ブーツは履きこなすためのスタイリング力が求められる。モノを使いこなすためには、モノと自己の関係を構築しなければならないのだ。
上記の例から分かる通り、モノと自己の関係構築には、努力や労力、ときにはセンスが必要だ。モノを持たないことを良しとする風潮には、どこかこの手間暇を億劫に思う気持ちが透けて見えているような気がする。
私は、モノと良い関係を築いていきたいと思っている。それは生活に新たな視点や豊かさを与えてくれる。
「モノを大切にする」というのは、こういうことだと思う。
僕もこの考えに賛成です。
僕流に言い換えれば、「偏愛には、努力や労力、ときにはセンスが必要である」ということになるかと思います。
コーヒーで言うと、例えば淹れ方ひとつ取っても無数のテクニックが存在していますね。
それ以前に、豆の選び方、抽出の理論はもちろん、味覚や嗅覚、カップの選び方に至るまで、実は本気で美味しいコーヒーを作ろうと思えば学ぶべきことが沢山あります。
ただ良い道具を買っただけで、何も学ぼうとせず、何も努力しないようでは、きっと偏愛の領域には辿り着けないでしょう。
その道具が持つ、真のポテンシャルを100%発揮させるには、ときに膨大な努力・労力も必要になるんですな。
今回紹介したオールドケメックスは、観賞用ではなくあくまで道具として購入しました。
なのでこれからも毎日ガンガン使いつつ、もっと上手く使いこなす方法、もっと美味しいコーヒーを淹れる方法を研究し、努力をし続けていきたいと思います。
そのような努力を積み重ねていけば、5年後、10年後はまた、見える世界が全く違っているはずです。
僕はこのオールドケメックスと、そういう関係を築いていきたいと思っています。
コメント
ケメックス、私も使用しております!
オールドケメックス…これはたまらないですね〜
「偏愛には、努力や労力、ときにはセンスが必要である」
これは同感です。所持したことで満足するではなく、
迎え入れたものは魅力を引き出してあげたいですね!
ウッドネックのカラーアイテムは知らなかったので、
珈琲器具を黒で統一している身としては嬉しい情報です笑
ABLE KONEのステンレスフィルターも気になっていたり…
このダークブラウンでしたら私の偏愛している
ヴィンテージのArabia Ruskaシリーズと合わせることで
たまらないものになりそうです!
このシリーズも釉薬でライトブラウンからダークブラウン、
刻印の有無等で状態が違い、お店や蚤の市で
好みの物を宝探しのように見つけるのが楽しかったりします。
コメントありがとうございます!
ケメックス愛用者に出会うと嬉しくなります!(笑)
ウッドネック、とてもおすすめです!
黒に統一されているということでしたら、黒のウッドネックにしたら非常に映えるでしょうね〜!
非常にカッコいいと思います!
確かに、Arabia Ruskaにも抜群に相性良さそうですね!!
実物を手に取ったことが無いのですが、ちょっと見てみたくなりました…!!
紹介されていたアイテム自体もすごく素敵だなと思いましたが、引用されていた文章がすごく心に残りました。
ミニマログ さんの記事はどれも、自分がどうやってモノと付き合うことに決めたのか?ということが綴られている記事ばかりだと感じ、だからとても興味深く読ませていただけているのだな、と思いました。
“センス”という一言で片付けるのはもったいないと思いますし、うまく伝えられないのですが、どうやってモノと向き合っているのかを、これからも参考にさせていただきたいと思います。
いつも楽しい記事をありがとうございます!
コメント頂きありがとうございます!
引用した記事、素敵ですよね!これはぜひシェアしたいと思い、ブログに載せてみました!
そして僕は、とらさんのコメントにもグッと来ました…!嬉しいお言葉ありがとうございます!!
こちらこそ、引き続きよろしくお願いします!