お気に入りの偏愛アイテムを語るこのシリーズ。
第11回目はサボテン「アストロフィツム 亀甲碧鸞(きっこうへきらん)」。
個性的な見た目だけでなく、この個体ならではの背景に隠れたストーリーがとても魅力的なんです。
アストロフィツム 亀甲碧鸞(きっこうへきらん)
こちらが今回ご紹介するアストロフィツム 亀甲碧鸞(きっこうへきらん)。
上から見ると綺麗な星形に見え、これがアストロフィツムという名前の由来にもなっています。
古典ギリシア語のástron(星)とphŷton(植物)からの複合語で、上から見た形が星形であるから、また、植物全体に星のような銀色のピンスポットがあることから名付けられたとも言う。日本語では「有星類(ゆうせいるい)」と呼ばれることもある。最も女性的なサボテン、また、最もエレガントなサボテンと呼ばれ、人気が高い。
引用元:https://ja.wikipedia.org/wiki/アストロフィツム属
アストロフィツムにもたくさんの種類があり、これは稜にぼこぼこと切れ目が入る亀甲碧鸞という種類です。
この個体は、繁殖目的で胴切りされた後、切断面から芽吹いた2つの子株がゆっくりと成長したもの。
胴切りとはその名の通り、胴を切断してしまうことです。サボテンはその切断面から新たな子株を出します。
切られても生長をし続ける生命力には驚嘆させられますね。
親株は木化が進んでおり、長い年月の経過を物語っています。
2つの造形
この個体の非常に面白いところは、上から見ると星形に見え、正面から見るとハート形に見えるところです。
つまり、星とハートが共存している造形なのです。
こちらが上から見た様子。
整った、美しい星形をしています。これが「有星類」と呼ばれる所以であります。
一方、こちらが正面から見た様子。
全体のシルエットがハート形に見えますでしょう?
この2つの共存がとても面白いなと思いました。
もちろんこれは胴切りによって生まれた偶然の産物。星とハートの共存とは、何と愛らしいことでしょう。
浮かび上がるストーリー
造形も面白いですが、ストーリーも面白いです。
「転んでもただでは起きぬ」ということわざがありますが、僕はこのサボテンを見て「転ばされてもただでは起きぬ」という言葉が頭に浮かびました。
前述のように、この個体は人間の手によって胴を切られています。言わば、人の手によって意図的にダメージを与えられたわけです。
それでも子株を出して必死に生長しようとする姿からは、まるで「転ばされてもただでは起きない」という植物の強い意志が感じられるようでした。
むしろ転ばされたからこそ今の唯一無二の素晴らしい姿があるわけで、このサボテンからは「転ぶことは必ずしもマイナスになるとは限らない」というメッセージ性を感じたんですね。
このサボテンを見る度にそんなストーリーを思い出せるのは、素晴らしいことだなぁと思いました。気分が凹んだときなんかは、この姿から勇気を貰えるような気さえします。
数あるサボテンの中からこの個体をチョイスしたのは、これが理由でもあります。
見えてきた植物選びの軸
僕は、部屋に植物を置くなら「少しだけ、でも飛びっきり良いもの」を置きたいと考えています。
なぜかというと、置けるスペースは限られているし、増やしすぎてもお世話できなくなってしまうからです。
僕が目指したいのは植物園ではなく、どちらかというと美術館なんですね。
なので、植物を買うときはよく考えて厳選する必要があるんですが、この厳選がなかなか難しい。
正直、見た目が美しい植物やカッコいいと思う植物はいくらでもありまして。
単純に「綺麗だな」と思うものを買い集めていたら、たちまち部屋が植物で埋め尽くされてしまうでしょう。
そこで、見た目以外の条件を考える必要があると思い、行き着いたのが「ストーリーを見出せるか」という軸でした。
今回の紹介したアストロフィツムでいうと、上で紹介している通り「転ばされてもただでは起きぬ」みたいなストーリーが見えましたね。
ストーリーやメッセージが見出せると、それはただのインテリアではなく、自分にとってインテリア以上の意味を持つ存在になります。
そういうアイテムがあると、お部屋で過ごす時間がより意味深いものになるのではないかと思います。
色んな植物を眺めてわかったのですが、美しいと感じることは多くても、ストーリーが見えてくることは稀です。
だからこそ、増やしすぎたくない僕にぴったりの選定条件でした。
これによっていわゆる「衝動買い」みたいなものも防げているのではないかなと思います。
植物と向き合うことでストーリーが見えてくるというのは、僕にとって大きな発見でした。
最初はストーリーを感じられなくても、アートと同じようにじっくりと向き合うことで見えてくることもあるのが面白いところ。
このアストロフィツムのおかげで、新しい植物の楽しみ方を見つけられた気がします。
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