今年やろうと思っていたことの一つに「クラシックシェービング」があります。
クラシックシェービングとは、両刃カミソリなどを使って昔ながらの方法で髭を剃る方法のことです。
4年ほど前にちゃん貴さんのブログ記事を読んで、僕もいつか両刃カミソリデビューしたいなと思っていました。
ずっと先延ばしにしていたんですが、4年越しの夢を実現させる為、遂に初の両刃カミソリを購入。
数多くあるカミソリホルダーの中から選んだのは、ドイツの髭剃りブランド・MÜHLE(ミューレ)のROCCA(ロッカ)というモデルです。
2ヶ月間のリサーチを経て、ROCCAに辿り着く
ROCCAはミューレから2016年に発売された、比較的新しいカミソリホルダーです。
そんなにメジャーなモデルではなく、どちらかというとマイナーで玄人好みのモデルかと思います。
ミューレのカミソリで入門用の定番モデルとしては「R89」が挙げられることが多く、ROCCAを勧めている人は見たことがありません。
ではなぜ、定番品ではないROCCAをチョイスしたのか?
それを説明するには「僕がいかにしてクラシックシェービングを学んだか?」をお話しする必要があります。
いかにしてクラシックシェービングを学んだか?
両刃カミソリを使ったクラシックシェービングは、カートリッジ式のT字カミソリを使った髭剃りとは似て非なるものです。
↓こんな感じで、1枚の両刃カミソリをホルダーにセットして使います。
ヘッドは動かない構造になっているので、適切な角度を保ちつつ適切な圧力で剃る技術が求められます。
僕はこれまでカートリッジ式のT字カミソリを10年以上使ってきましたが、それと同じ感覚で両刃カミソリを使っちゃうと、文字通りケガをしてしまうでしょう。
そこで本格的にクラシックシェービングに手を出す前に、まずはしっかりと勉強をすることにしました。
「髭剃りのリスキリング」みたいなもんですな(笑)
日本だとクラシックシェービングに関する情報がかなり少ないんですが、僕は次の方法で基礎知識を吸収していきました。
まず、以下2サイトのクラシックシェービングに関する記事を全て読みました。
いずれも個人ブログですが、僕が見つけた中ではこの2サイトが国内トップレベルの情報量の多さを誇るブログだと思います。
Shave and Grindさんはクラシックシェービング特化ブログです。現時点で約160記事ほどアップされていますが、僕はその全てに目を通しました。
2016年から始まり今も更新を続けられている希少なブログで、内容もかなり面白く、クラシックシェービングに興味を持ったらまずはこのブログから読み始めるのがオススメ。
HiroQ HQさんは雑記ブログなんですが、クラシックシェービングのカテゴリーに約80本ほど記事があります。これも全て読みました。
記事1本1本が異常なレベルの文量で、トピックに対してかなり深掘りをしています。完全にマニア向けの情報って感じです。
この2サイトを読破した時点で相当量の知識が身につきましたが、加えて海外の書籍・フォーラム・ブログ・YouTube等でさらに情報収集を重ねました。というのも、クラシックシェービングの話題は海外の方が圧倒的に情報量が多いからです。
中でも「Leisureguy’s Guide to Gourmet Shaving the Double-Edge Way」という洋書はかなり良かったです。
海外だとクラシックシェービング専門の書籍がいくつか出ているんですが、この本が最も網羅的で内容が濃い1冊だと思いました。洋書なので読むハードルはちょっと高いですが、クラシックシェービングを極めたい人にとって必読の書ではないかと。
そんなこんなで、これらのリサーチ作業にはトータル2ヶ月ほどの期間を要しました。
クラシックシェービングはかなり奥深い世界で、現在も勉強を続けていますが、いまだに底が見えないです。
辿り着いた答え
初心者におすすめの両刃カミソリホルダーとしてよく挙げられているのが、以下の3モデルです。
- Muhle(ミューレ)の「R89」
- Edwin Jagger(エドウィンジャガー)の「DE89」
- Merkur(メルクール)の「34C」
いずれもバランスが良く使いやすいと言われており、初めて本格的な両刃カミソリを買うとしたらだいたいこれらのいずれかを選ぶことになってしまうようです。
「選ぶことになってしまう」とやや消極的なニュアンスで書いたのは、日本で買える両刃カミソリの種類がそんなに多くなく、有名どころと言えばこれらしか選択肢が無い&情報が出てこないからであります。
しかし「初心者向け」や「定番」と謳われている道具を買うのは、ちょっともったいない気もしました。道具は何でもそうですが、僕の経験上、初心者向けのものを買ってもあんまり満足できないことが多いからです。
リサーチしている中でわかったのですが、上記の定番モデルを買ってみたものの、やはり物足りなくなって結局別のホルダーを買い求めるという人も一定数いらっしゃるみたい。
僕自身もそうなるであろうことが予想できました。
加えて、妙に深く事前学習しちゃったもんだから「自分なら最初から上級モデルも使いこなせるだろう」という謎の自信が湧いてしまいまして、別に初心者向けのモデルを買う必要も無いと思っちゃったんですよ(笑)
というわけで、僕は「万人が使いやすい定番モデル」ではなく、「ひと癖あるけど使いこなせたら最強」みたいな玄人向けカミソリをチョイスすることにしました。
そうしてアグレッシブさ(剃り味の強さ)・デザイン・重さ・素材など、総合的に吟味を重ねた結果、辿り着いたのがミューレのROCCAでした。
ROCCA R96 シェービングセットを購入
こちらが購入したROCCA R96 シェービングセット。単品ではなく、ブラシとスタンドのセットを買いました。
色はツートーンカラーが美しいblackモデル。セットのブラシは人工毛ブラシです(アナグマ毛のセットもありましたが、僕はあえて人工毛ブラシをチョイスしております)。
前述の通り2016年に発売された比較的新しいモデルですが、ROCCAは発売後も製造プロセスやヘッドに改善が加えられているらしく、現在売られているものはおそらくバージョン4にあたります(初期モデルは何かしらの不具合があった、みたいな記述をどこかで読んだ)。
ミューレには「R89」というマイルドな剃り心地のカミソリホルダーと、「R41」という超アグレッシブな剃り心地のカミソリホルダーがあるんですが、それらのちょうど中間くらいの剃り心地を目指して作られたのがこのROCCAと言われています。
「R89」も「R41」も名作と言われていますから、それら名作の知見をベースに最新技術を持って作られた新しいカミソリホルダーとあらば、大いに期待できると踏みました。
届いて実際に手に取ってみると、その予想は的中。造形や質感はもはやジュエリー並みの美しさで、すぐに気に入りました。
使う前から「これを選んで正解だったな」と思いました。
R89と比べてみた
新宿伊勢丹のメンズ館に定番品のR89とROCCAの実物があったんで、実物を手に取りながら双方を比べてみました。
写真で見ると同じようなものにしか見えないかもしれませんが、実物を触ると全くの別物ですね。
ROCCAはマットなステンレススチール製で、クールなカッコ良さがあります。ステンレスだから耐久性も抜群。ちなみにR89の方は真鍮にピカピカのクロムメッキ仕上げです。
R89と比べると、ROCCAの方がわずかに軸が太く、重量も重かったです。
※一般に、ある程度重い方がコントロールしやすく剃りやすいとされている。
グリップのハニカム構造はかなり強力で、指の指紋にガッツリ引っかかって全く滑らない感じ。これは驚きました。ミューレのカミソリホルダーは一部「軸が滑りやすい」という意見があったようなんで、ROCCAはその課題を解決しにいったのでしょう。
ドイツのミューレ公式サイトから買った
ROCCAのホルダー単品なら日本でも買えるんですが、実は僕が購入した人工毛ブラシ&スタンド付きのセットはなかなか買えません。
アナグマ毛のブラシセットなら国内でも僅かに在庫が確認できるんですが、なぜか人工毛ブラシのセットはどこも取り扱っていないんですよ。
↓このようにアナグマ毛ブラシのセットは売っているが、人工毛ブラシのセットは見当たらない。
僕は人工毛ブラシのセットが欲しかったので、海外から個人輸入することにしました。
人工毛ブラシにしたかった理由は、使用後の乾きが早いからです。
衛生的に保ちつつ毎日の使用も可能とされているので、最初の1本に最適だろうと判断しました。
購入先の候補はいくつかありましたが、せっかくなのでドイツのミューレ公式サイトから買うことに。
ちなみに日本のミューレ公式サイトとドイツのミューレ公式サイトは全然違います。ドイツの方がめっちゃ見やすくて商品の説明も詳しい。
しかし、ここに罠がありました。
いざ購入手続きを進めてみると、ドイツのミューレは国際発送には対応しているにもかかわらず、日本は送り先の対象外となっていたんですよ…!!嘘だろー!
仕方がないのでドイツのミューレ公式から買うのは諦めることに……、なんて引き下がる僕ではありません。なんとしてもドイツのミューレ公式から購入すべく、裏ワザを使うことにしました。
利用したのは「Forward2Me」という転送サービスです。
これを使うと、ドイツのミューレから一旦ドイツのForward2Me倉庫に送ってもらい、Forward2Meから日本の自宅まで発送してもらえます。
Forward2Meに登録すると自分用のドイツ住所が割り当てられるんで、そのドイツ住所を送り先にしてミューレで買い物をします。
商品がForward2Meに到着するとメールでお知らせが届くんで、そこから発送方法などを指定してForward2Meから日本に送ってもらうという流れです。
商品は1週間ほどで自宅に到着しました。意外と早かったし、破損等もなく良い状態で届いて良かったです。
こんなふうに、Forward2Meを使えば日本発送に対応していないショップから簡単に商品を買うことができるんですが、場合によっては手数料がめっちゃ高くつくので注意が必要。
今回も本当はドイツのミューレ公式から直接買えれば日本で買うよりも安く買えたはずなんですが、Forward2Meを挟んだことでトータルでは結局日本で買うのと同じくらいの費用が掛かっちゃいましたね。
でもまぁ、個人的には良い経験でした。元々転送サービスはいつか使ってみたいな〜と思っていたんで、丁度良い機会だったなと。
この方法を使えば、今後は海外から何でも買えてしまいますな。ある意味、世界が広がったと言えます(笑)
使ってみた感想
ROCCAの実際の使用感をレビューしてみましょう。
初めてROCCAで髭を剃ったときは、さすがにちょっと緊張しました。
両刃カミソリのレビューではよく「血だらけになった!」みたいな感想を目にしますから、事前にしっかり予習していたとはいえ、恐る恐るの挑戦でした。
王道の3パス(順剃り→横剃り→逆剃り)で剃ってみたんですが、全く出血することもなく、綺麗に剃れました。
感覚としては、これまで使っていた5枚刃T字カミソリと同じくらい綺麗に剃れた感じ(初めてなので首筋や顎付近にちょっとだけ剃り残しがありましたが、あえて深追いはしませんでした)。
カミソリの使い心地はとても良いです。持ちやすくて小回りも効くし、扱いやすいなと感じました。
予想外だったのは、ブラシが重すぎてラザリング(泡立て)のときにちょっと手が疲れるということでした(笑)
カミソリの重量ばかり気にしていましたが、ブラシの重量は盲点でしたね。まぁ、見た目がカッコいいから別にOKですが。
前述の洋書「Leisureguy’s Guide to Gourmet Shaving the Double-Edge Way」に書いてあった、力加減のコツや上達する為の方法がものすごく役に立ちました。髭を剃るたびに、メキメキとスキルが上達していくのがわかります。楽しいなぁ。
だいたい使用回数が10回を超えたあたりからでしょうか、ROCCAの扱いにも少しずつ慣れ、5枚刃T字カミソリ以上の完成度で髭を剃れるようになってきました。
ちなみにもう何度もROCCAで髭を剃っていますが、血が出たことは今のところ一度もありません(多分これはめちゃくちゃ勉強しまくったおかげではないかと)。
替刃は6種ほど試しましたが、今のところ剃り味がシャープすぎない替刃の方が快適に剃れると感じています。
ただしこれはROCCAに現状の僕の肌質や技量が組み合わさった場合の話なんで、もっとスキルが上達すればまた変わるかも。
上手く剃れると、肌がシルクのような手触りになるのが気持ちいい。また、夜の入浴時に剃ると、翌朝は肌がめちゃくちゃモチモチしています。
これは5枚刃のT字カミソリを使っていたときは無かった感覚です。
毎回剃るたびに上達していってるんで、まだまだスキルの伸び代がありそう。もっと上達したら、さらに上のシェービング体験になる予感…。
ROCCAで踏み入れた新たな世界
ROCCAを選んだのは大正解でした。
やはり道具は最初から「飛びっきり良いもの」を選ぶに限る。
この上質な道具おかげで、クラシックシェービングという新しい趣味の世界が開け、毎日が爆発的に楽しくなっております。
今回は一応ROCCAのレビューということで記事を書いたので、僕が実践しているシェービングの手順や、同時に揃えた周辺アイテムについてはあえてあまり触れませんでした。
が、本当は他にも語りたいことが山ほどあるんですよね。
この記事ではずっと「クラシックシェービング」と言ってきましたが、実は僕は、従来のクラシックシェービングを少しアップデートしたいと考えています。
前述の通り、僕はクラシックシェービングについて色々な情報源をリサーチしたのですが、そこには少々納得がいかない通説や慣習も多いことに気づきました。
例えばこういう疑問が出てきます。
- 替刃は世界に百種以上あると言われているが、なぜ選ぶ基準が全く無いのか?
- シェービングソープの容器にブラシを突っ込むラザリングって不衛生ではないか?
- シェービングボウルは何でも良いと言われるが、本当にそれでいいのか?
- ブラシは毛穴を綺麗にしたりヒゲを立たせるのに有効って本当だろうか?
現代の知見や技術を取り入れれば、もっと快適なシェービングを実現できるのではないだろうか…。
だから僕は提案したいと思うんです。クラシックシェービングに現代的なエッセンスを加えた、「モダンクラシックシェービング」という新しい考え方を。
これについては、また別の記事でご紹介したいと思います。
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