東京・南青山に、現代版オリバンダーの店みたいな万年筆専門店があります。
その名は「書斎館」。万年筆が壁一面にズラリと並ぶ、ペンの専門店です。
実は最近、手帳を使い始めたのをきっかけに万年筆を使いたい欲が再燃しましてね。このお店で、自分にピッタリの万年筆に出会いました。
魔法の杖選びみたいに

こちらは書斎館の店内。ざっと3,000種くらいの万年筆の取り扱いがあるらしい。
個性豊かな万年筆の数々が陳列されている様子は、まるでハリーポッターに出てくるオリバンダーの店(魔法の杖専門店)を彷彿とさせます。

じっくり腰を据えて、試し書きをしながら選べるので、自分の好みにあった万年筆を見つけることができる素敵なお店です。

実は8年ほど前に、僕はこの店で万年筆を買ったことがあるんですよね。
当時買ったのはペリカンのスーベレーンで、自分へのセルフ誕生日プレゼントに購入しました。
ところがこのペン、買って数日後にどこかに落として紛失してしまったんですよね…。まだほとんど使っていないのに無くしてしまうという、なかなか苦い思い出であります。
そのときは「自分には万年筆は縁が無かったんだな」と解釈して、以来、万年筆は使わなくなってしまいました。

そんな過去の思い出がありつつ、また万年筆を買おうと思ったのは、最近手帳を使い始めたのがきっかけです。
手帳を書いているうちに、ふとまた万年筆を使ってみたくなったんですよね。
昔買ったスーベレーンは、単に有名なブランドだからという理由で選んだ記憶がありますが、今回はそういう選び方ではなく、ブランド関係なく本当に自分の手の感覚に合うものを選び抜こうと思いました。
セーラー万年筆 プロフィット ブラックラスター

そうして8年ぶりに書斎館へ訪問。
手帳に書き込む用の万年筆が欲しかったので、太さはEF(Extra Fine=極細字)が良いと考えていました。
店員さんに相談していくつかピックアップしてもらい、試し書きをしながら色々と物色。
すると、1つだけ明らかに他とは違う書き味の万年筆を発見しました。それは、日本の老舗メーカー・セーラー万年筆です。

他の万年筆だと、カリカリと紙を引っ掻くような感覚があまり心地良くなかったのですが、セーラー万年筆はスルスルと引っ掛かりなくペン先が進む感じが気に入りました。

一般に、海外の万年筆より日本の万年筆の方が細字が綺麗に書けると言われていますが、その中でもセーラーの書き心地の良さは別格に感じましたね。
パイロットやプラチナといった他の日本ブランドの万年筆も試してみましたが、個人的にフィーリングが一番合ったのはセーラー万年筆でした。

そうして僕が最終的に選んだモデルは、プロフィット ブラックラスター。司法試験や論文など、長時間の筆記向けに作られた万年筆です。
重心がペン先に近いところに設定されていて、ほとんど力を入れることなく、スラスラと筆が進むのが特徴。
ペン先と金属パーツは全てブラック仕上げになっていて、全体的に落ち着いた印象のデザインです。



個人的に気に入っているのは、首軸(指で持つ部分)が金属なところ。金属だとヒンヤリとした質感と程よい重みが感じられて、手に持っていてとても気持ちがいいのです。

デザインに関して、第一印象はちょっと地味かなと思ったのですが、よく考えたらこれはこれでビジネスシーンなどでも悪目立ちせず使いやすそうと思い直しました。
手に持ってみたら妙にしっくり来て、納得感がありました。まるで僕がこのペンを選んだのではなく、ペンが僕を選んだかのよう(まさにオリバンダーの店!)。

知らなかったんですが、最近セーラーでは商品ラインナップ刷新が行われていて、このプロフィット ブラックラスターはもう廃盤になったらしい。代わりにブラックトリムってのが現行品として登場しています。

ブラックラスターはネットで探せばまだ買えなくはないですが、だいぶプレミア価格になっちゃってますね。現行品のブラックトリムもブラックラスターの倍近くの値段…。なかなかの値上がり具合です。
僕は運良く、お店に1本だけ在庫が残っていたのを購入できました。
万年筆ってこんなに快適だったっけ

プロフィット ブラックラスターを買ってから、毎日愛用しています。
使ってみて感じているのは、この万年筆を買って大正解だったということ。もっと早く買っておけばよかったと後悔しているくらいです。

何より、書くのが心地良すぎて筆記が捗りまくる。ガチで何時間でも書けるぞこれ…。
ボールペンとは全然違って、ペン先から文字が溢れ出る感じです。ずっと書いていたいなと思えるほどの気持ち良さで、もはや今まで書いてきた文字を全てこのペンで書き直したいレベル。
万年筆ってこんなに気持ちのいい筆記具だったとは。こんだけ快適だと、もはやボールペンとか他のペンは使いたくなくなっちゃいますな。

多分、このブラックラスターが完璧に僕にフィットしているのでしょう。
ペンの大きさ、形、重さ、文字の太さ、インクフローなど、全ての条件が僕の手や書き方の癖にピッタリ合っているのだと思います。

昔、ペリカンのスーベレーンを買ったときにはこんなふうに感じませんでした。きっと、スーベレーンは自分に合っていなかったのかもしれません。だからペンの方から去っていったのかも。
万年筆ってちょっと不便な道具って印象を持たれている方もいらっしゃるかもしれませんが、むしろ真逆で、実際に使ってみるとこれほど便利な道具はないと感じています。
特段難しいメンテは必要ないし、インク漏れなどのトラブルも一切なく、ずっと綺麗な文字が快適に書ける。
書き方で多少太さを変えられるし、インクを色々変えられるのも面白いです。

ちなみに今使っているインクは、セーラーのSHIKIORIシリーズの「霜夜(しもよ)」。
「青すぎない青」みたいな色を探していたんですが、霜夜はグレー味かかった青みたいな独特の色で、めちゃくちゃ好みでした。こんなにパーフェクトな色味を一発で引き当てられるとは、本当に運がいい。

他に気になった色は「羚羊(かもしか)」ですかね。昔ブラウン系のカラーペンを長く愛用していたことがあるんで、こういった色にも惹かれます。
霜夜が気に入りすぎているんでしばらくこれを使い続けようと思っていますが、無くなったタイミングでちょっと違う色も試してみようかなと思います。
セーラーはインクも充実しているから、こういった楽しみ方も面白いですね。
無限と有限のキャンバス

最近は手で紙に書くこと、つまり「限られたスペースに消せない文字を刻む」という行為に、価値を見出しています。
理由は、それが僕にとって行動と思考を生む装置として優れていたから。
「このデジタル・AI時代に手書きかよ」と思われるかもしれませんが、デジタル・AIを使わないということではありません。
そこに手書きを併用することで、より行動や思考を加速させることができたということです。

修正が効かない文字・限られたスペース・タイピングより遅い手書きという制約があるおかげで、逆にめちゃくちゃ頭を使うようになった感じなんですよ。
デジタルが無限のキャンバスなら、手書きは有限のキャンバスで、頭からより濃くて意味のあるアウトプットが抽出されるイメージ。
有限で制限があるからこそ、構造化する・優先度をつける・本質だけを書く、といったことが促されるのかもしれません。
OpenAI(ChatGPTの会社)のCEO サム・アルトマンもめちゃくちゃ手書き派らしいですが、ひょっとしたら同じような感覚なのかも。
僕の場合、自分が一日にできるタスクや行動量などたかが知れていて、メモにして数行程度のことしか1日にこなすことができません(大人になって、ようやく自分の1日の限界を正しく推しはかれるようになった)。
だからその数行に何を弾込めするか、ということが重要になってきますが、それをちゃんと考えさせてくれるのが手書きです。
セーラー万年筆は、そんな思考や行動をサポートしてくれる最高の相棒みたいな存在なので、これからもガシガシ使い倒していきたいと思います。











































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